大腸ポリープ(腺腫)とは
大腸ポリープとは、大腸のいちばん内側にある粘膜にできる「イボ」のような盛り上がった病変のことです。形はキノコ型から平べったいものまで様々で、数ミリから数センチ大まで色々なサイズがあります。特に直腸やS状結腸など、肛門に近い部位に高い確率で発生するのが特徴です。
大腸ポリープは決して珍しい病気ではなく、40歳以上の方では比較的よくみられる病変です。近年の食生活の欧米化(動物性脂肪の摂りすぎ、食物繊維の不足)に伴い、日本人の間で大腸ポリープや大腸がんは増加傾向にあります。
胃のポリープは「基本的には放っておいて大丈夫なもの」が大半ですが、大腸のポリープは放置するとがん化するリスクがあるため、発見したら早期に切除することが医療の基本原則となっています。
本ページでは、大腸ポリープの種類や症状、原因、がんとの関係、検査・治療方法についてわかりやすく解説します。
大腸ポリープの種類
大腸ポリープは、将来大腸がんになる可能性のある「腫瘍性ポリープ」と、がんにはならない「非腫瘍性ポリープ」の2つに大きく分けられます。
腫瘍性ポリープ
大腸内視鏡検査で最も多く発見されるポリープです。その大半は「腺腫」と呼ばれる良性の腫瘍ですが、放置すると時間の経過とともに徐々に増大し、最終的にその一部が悪性の大腸がんへと変化(移行)していく性質を持っています。そのため、見つけたら切除することが強く推奨されます。
非腫瘍性ポリープ
炎症や粘膜の誤作動によってできたポリープ(過形成性ポリープや炎症性ポリープなど)です。これらは一般的にはがん化のリスクが低いポリープであるため、基本的には無理に切除をせず経過観察となります。ただし、肛門に近い場所にできる大きなものなど、一部に特殊なリスクを伴う例外もあるため、医師による正確な見極めが必要です。
大腸ポリープと胃ポリープの違い(がん化の仕組み)
同じ「ポリープ」という言葉を使いますが、胃と大腸では、治療すべきかどうかの判断が根本から異なります。
- 胃ポリープの場合: 胃がんの多くは、ポリープを経由してがんになるわけではありません。最初から「がん」として胃の粘膜に直接発生するため、良性の胃ポリープは経過観察となることが多いです。
- 大腸ポリープの場合: 手術や抗がん剤を必要とするような大腸がんの多くは、正常な粘膜からいきなりできるのではなく、「良性のポリープ(腺腫)が数年から10年ほどかけて大きく育ち、その中からがんが生まれる」というルートをたどります。
つまり、大腸ポリープという良性の段階で大腸カメラを使って切除してしまえば、将来の大腸がんを未然に防ぐこと(予防)につながります。だからこそ、大腸ポリープは見つけ次第、切除する治療上のメリットが非常に大きいのです。
大腸がん予防のためにも、定期的な大腸カメラ検査による早期発見・早期治療が大切です。
大腸ポリープの症状
大腸ポリープは、小さいうちは自覚症状がほとんどありません。しかし、サイズが大きくなるにつれて「便がポリープに擦れる」「便の通り道が狭くなる」といった物理的な影響により、以下のような症状が見られるようになります。
- 血便・便潜血陽性: 便がポリープの表面と擦れて粘膜が傷つくことで、便に血が混じったり、健康診断の便潜血検査で陽性が出たりします。
- 便通の異常(下痢・便秘): ポリープが大きくなって腸の通り道が狭くなると、便がスムーズに通過できなくなり、急な便秘や下痢、便が細くなるといった症状が起こります。
- 腹痛・お腹の張り: 大きなポリープによって便やガスの流れが滞ることで、下腹部の痛みやお腹の張りを生じることがあります。
このように、大腸ポリープの症状の多くは「大きくなった病変に便が干渉すること」で起こります。初期の段階では全く無症状だからこそ、お腹の痛みがなくても定期的な大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で確認しておくことが大切です。
大腸ポリープの検査と切除治療
大腸がんを確実に予防するためには、無症状のうちに精度の高い検査を受け、がん化のリスクがある病変を早期に処置することが極めて重要です。
大腸の検査方法
大腸の状態を調べる検査にはいくつか種類がありますが、ポリープを直接その場で「発見・観察・治療(切除)」できる大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が、最も推奨される標準的な精密検査です。
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ): 肛門から細いスコープを挿入し、大腸の粘膜全体を直接目で見て観察する精密検査です。ポリープの有無だけでなく、大きさ、形状、色調まで詳細に把握でき、さらにその場で切除や生検(組織採取)を行うことができる点が大きな特徴です。
- 便潜血検査: 便を採取して目に見えない微小な出血を調べる、大腸がんの「ふるい分け(スクリーニング)」に有用な簡易検査です。ただし、出血していないポリープは見落としてしまう可能性があります。
- カプセル内視鏡検査: 超小型カプセルを飲む検査です。過去の手術による癒着等でスコープ挿入が難しい場合に有効ですが、その場でポリープの切除や生検はできません。
- CTコロノグラフィ: CT撮影のデータを用いて大腸を立体的に評価する、身体への負担が少ない検査です。こちらも同様にスコープが通らない場合に有用ですが、切除や生検は行えません。
- 下部消化管造影検査(注腸検査): 肛門からバリウムを入れてレントゲンを撮影し、大腸全体の形やポリープの位置を立体的に把握する検査です。
大腸ポリープの切除治療
大腸カメラの観察によって「がん化のリスクがある(腺腫などの可能性が高い)」と判断されたポリープは、治療方針に合わせてその場で内視鏡的に切除を行います。
当院では、日帰りでのポリープ切除手術(ポリペクトミー・EMR)に対応しています。
- ポリペクトミー:きのこのように「茎」があるポリープの根元に、金属の輪(スネア)をかけて締め付けながら高周波電流で焼き切る方法です。
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR):平らな形状や茎がないポリープの下に液体を注入してプクッと持ち上げ、安全に切り取る方法です。比較的大きなポリープにも対応可能です。
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):平らな形や、茎がほとんどないポリープで、一括切除が必要な大きな病変の場合に行う治療です。入院加療となりますので、総合病院に紹介しています。
大腸ポリープ切除後は、切除部位からの出血を防ぐため、数日間は飲酒や激しい運動を控える必要があります。また、切除したポリープの種類や大きさによっては、定期的な大腸カメラによる経過観察が推奨されます。
大腸ポリープの原因とできやすい人の特徴
大腸ポリープは、加齢などの体質的な背景に、日々の生活習慣が重なることで発生・増殖します。特に以下のような要素が主な原因であり、できやすい人の特徴でもあります。
- 食生活の欧米化(肉食・野菜不足): 牛肉や豚肉などの「赤身肉」やハム・ソーセージなどの「加工肉」を好み、野菜(食物繊維)が不足している人は腸内環境が悪化し、ポリープができやすくなります。
- 加齢(40代後半〜50歳以上)と性別: 加齢とともに腸の細胞が老化するためリスクが急増します。また、統計的に女性よりも男性の方が発生頻度が高い傾向にあります。
- 肥満・運動不足: 運動不足は腸の動きを低下させ、便(発がん物質など)を腸内に留まりやすくします。また、内臓脂肪の蓄積(メタボ)は腸管に慢性的な炎症を引き起こします。
- 喫煙・過度の飲酒習慣: タバコの化学物質やアルコールの代謝物が、大腸の粘膜を直接傷つける外的因子となります。
- 体質・家族歴(遺伝): 血縁の家族に大腸ポリープや大腸がんを患った人がいる場合、体質的な影響でリスクが2〜3倍高まります。潰瘍性大腸炎などの持病がある方も粘膜の修復プロセスでできやすいです。
大腸のポリープは自覚症状が出ないからこそ、こうしたリスクに心当たりがある方は、定期的な大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で腸の中を正しくチェックしておくことが大切です。大腸がん予防のためにも、早期発見・早期治療を意識して定期的な検査を受けましょう。
当クリニックの内視鏡検査について
消化器症状の原因を正確に特定するためには、胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査による詳細な診断が重要です。原因が明確になることで、適切な治療へとつなげることが可能になります。
当院では、苦痛や不安に配慮した内視鏡検査を行い、初めて検査を受ける方にも安心してご受診いただける環境づくりを心がけています。
当院の内視鏡専門医は、消化管の部位ごとに適切な内視鏡操作を行い、苦痛を最小限に抑える検査技術を熟知しています。これまで培ってきた豊富な経験と専門技術を活かし、安全性と快適性を両立した検査を行っていますので、安心してお任せください。
内視鏡検査について詳しく知りたい方へ
当院の内視鏡検査の特徴や検査の流れ、費用については、以下のページで詳しくご案内しています。