大腸がんとは
大腸がんは、大腸の最も内側にある粘膜の細胞から発生する悪性腫瘍です。大腸は全長1.5〜2メートルほどある長い臓器で、大きく「結腸」と「直腸」に分けられ、がんができた部位によって「結腸がん」「直腸がん」とも呼ばれます。日本人には特に「S状結腸」と「直腸」にがんができやすいことが知られています。
国立がん研究センターの最新統計(2024年死亡数・2021年罹患数)によると、大腸がんの罹患数は男女総数で第1位、死亡数では男女計で第2位(男性2位、女性1位)となっており、日本人にとって非常に身近ながんの一つです。
一見すると怖い病気に思えますが、大腸がんは早期発見さえできれば比較的治療成績が良く、完治が十分に望めるがんの代表格でもあります。初期の段階(ステージ0〜1など)で見つけることができれば、お腹を切らずに大腸カメラを用いた内視鏡治療だけで完治を目指すことも可能です。
本ページでは、大腸がんの症状や原因、検査方法、進行度(ステージ)、治療についてわかりやすく解説します。
大腸がんの症状
大腸がんは、がん自体によって起こる症状と、がんの存在によって腸の働きが乱れて起こる症状があります。実際にはこれらを症状だけで区別することは困難です。
大腸がんの初期症状
早期の大腸がんには、ほとんど自覚症状がありません。がん細胞が粘膜の表面にとどまっている段階では、痛みや違和感はほぼ出ないのが特徴です。
「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、無症状のうちに定期的な検査でチェックすることが、手遅れを防ぐ最大のポイントになります。
進行した場合の症状
がんが進行して腫瘍が大きく育ち、腸の通り道(内腔)が狭くなってくると、以下のような明確なサインや自覚症状が現れ始めます。
- 便に血が混じる(血便・下血):便ががんの表面と擦れて出血し、赤い血が付着したり便全体が黒っぽくなったりします。
- 便通習慣の変化(下痢と便秘の繰り返し):腸の通り道が狭くなることで便がスムーズに通らなくなり、便秘になったり、狭い隙間を通り抜けようとして下痢になったりします。
- 便が細くなる・残便感:特に肛門に近い直腸にがんができると、便が細くなったり、排便後もすっきりしない感覚が残ります。
- おならの回数増加や臭いの変化:がんによって腸の通り道が狭くなると、ガスが体内に溜まりやすくなっておならの回数が増えたり、腸内環境のバランスが乱れることで急に極端に臭くなったりすることがあります。
- お腹がゴロゴロ鳴る・腹痛・お腹のはり:狭くなった腸を便やガスが無理に通り抜けようとする際、お腹がゴロゴロと頻繁に鳴る(腸鳴)、腹痛が起きる、お腹が張る(腹部膨満感)といった症状が出現します。
- 原因不明の貧血や急激な体重減少:目に見えない微量な出血が慢性的に続くことで貧血(めまい・立ちくらみ)を起こしたり、がんの進行によって体重が減少したりします。
がんのできる部位による症状の違い
大腸は全長1.5〜2メートルにおよぶ長い臓器であるため、がんが発生する場所(右側か左側か)によって、便の形状や腸管の太さが異なり、現れる症状にも明確な違いが生じます。
- 右側大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)のがん: この部位の便はまだ水分を多く含んだ「液状」であり、腸管自体も太いため、がんが大きくなっても便の通過障害がほとんど起こりません。そのため、下痢や便秘といった便通の異常が起きにくく、がんがかなり大きくなり、「貧血」や「腹部のしこり」が現れて初めて気づくケースが多いのが特徴です。
- 左側大腸(下行結腸・S状結腸)や直腸のがん: この部位に達すると便は「固形」になり、腸管も狭くなるため、物理的な通過障害(便秘・下痢・腹痛)を非常に起こしやすくなります。また、肛門に近いため、目に見える鮮血便(赤い血便)や残便感、便が細くなるといった症状が比較的早い段階から現れやすく、右側に比べて異常を発見しやすい特徴があります。
便通の変化や気になるお腹の不調が続く場合、一時的に落ち着いたとしても、ストレスや単なる便秘と思い込んで放置せず、速やかに消化器内科を受診して原因を調べることが大切です。
大腸がんの原因
大腸がんの原因は一つだけではなく、環境的要因(生活習慣)や年齢、遺伝的背景など、さまざまな要因が複雑に重なり合って発生すると考えられています。
大腸がんになりやすい人の特徴
大腸がんの発症リスクを高める危険因子として、以下のような特徴に当てはまる方は特に注意が必要です。
- 年齢・性別: 40代後半から罹患率が上昇し始め、高齢になるほどリスクが高くなります。統計的に男性の方が高い傾向にあります。
- 食生活の欧米化: 牛肉や豚肉などの赤身肉、ハム・ソーセージなどの加工肉の過剰摂取や、食物繊維の不足が指摘されています。
- 嗜好品と生活習慣: 日常的な過度の飲酒や喫煙習慣、運動不足などが発がんリスクを高めるとされています。
- 体形(内臓脂肪): 肥満や内臓脂肪の蓄積は腸管に慢性的な炎症を引き起こし、がんのリスクを上げる要因になります。
- 家族歴(遺伝性): 血縁の家族に大腸がんや大腸ポリープの既往歴がある方、または遺伝性大腸がんの家系の方は注意が必要です。
生活習慣の改善に努めることはもちろん大切ですが、リスク因子に心当たりがある方は、症状がなくても40歳を過ぎたら定期的な検診や検査を受けることが推奨されます。
大腸がんの検査
大腸がんは、自覚症状のない初期の段階で発見し、早期治療へつなげることが何よりも重要です。早期に適切な治療を開始できれば、体への負担を最小限に抑え、良好な経過が期待できます。
便潜血検査(検診)
大腸がん検診で広く普及している簡易検査です。2日間の便の潜血(目に見えない微小な血液)を調べます。ただし、出血していないがんやポリープは発見できない場合があり、全ての病変を確実に検出できるわけではないため、定期的な受診が大切です。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
肛門から細い内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜を直接目で見て観察します。わずかな色調変化や微細ながんを早期に発見できるだけでなく、疑わしい病変があればその場で組織を一部採取(生検)し、顕微鏡で調べる病理検査を行うことで確実な確定診断が可能です。また、がんが粘膜の表面にとどまるごく浅いものであれば、そのまま内視鏡で完全に切除治療することもできます。
その他の精密検査
手術後の癒着などでスコープの挿入が困難な場合には、バリウムを注入して撮影する「注腸X線検査」や、ガスで腸を膨らませて撮影する「大腸CT(CTコロノグラフィ)」が検討されます。
大腸がんの進行度(ステージ)について
大腸がんの進行度(ステージ)は、がんが大腸の壁をどこまで深く進んでいるか(深達度)、周囲のリンパ節に転移しているか、別の臓器に転移しているかを総合的に評価して、ステージ0〜Ⅳに分類されます。
大腸の壁は内側から外側に向かって層が重なる構造をしており、がんが深く浸潤するにつれて血管やリンパ管に入り込み、全身へ転移するリスクが高まります。
壁深達度(T因子)について
大腸の壁は、内側から外側に向かっていくつかの層が重なる構造をしています。がんがどの層まで深く進んでいるかによって、以下のように分類されます。
- Tis: がんが粘膜層の内部だけにとどまっている状態。
- T1: がんが粘膜の下にある粘膜下層まで達している状態。
- T2: がんが固有筋層(筋肉の層)まで広がっている状態。
- T3: がんが固有筋層を越え、漿膜下(しょうまくか)組織まで広がっている状態。
- T4:がんが大腸の最も外側にある漿膜を突き破っている、または隣り合う他の臓器まで達している状態。
早期大腸がんとは
がんの広がりが「粘膜」および「粘膜下層」までにとどまるものを指します(Tis、T1がん)。 この段階(ステージ0〜Ⅰ)で発見できれば、リンパ節転移のリスクが非常に低いため、適切な治療(内視鏡治療や手術)を行うことで極めて高い確率で完治を目指すことが可能です。
進行大腸がんとは
がんの浸潤が、粘膜下層よりも深い「固有筋層」以降に及んでいるものを指します(T2〜T4病変)。深く進むにつれて血管やリンパ管を通って周囲のリンパ節や、血管を通じて遠く離れた臓器(肝臓や肺など)へ転移するリスクが高まります。
大腸がんは、良性のポリープが数年かけて徐々に大きくなり、その一部ががん化していくケースが大半を占めますが、一部にはポリープを経由せず、正常な粘膜から直接がんが発生する特殊なタイプもあります。いずれの場合も小さいうちは自覚症状がないため、リスクを過信せず、定期的に大腸カメラ検査を受けておくことが確実な予防と早期発見のために不可欠です。
大腸がんの治療
大腸がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者様の年齢、全身状態などを総合的に考慮して決定されます。
なお、切開を伴う外科手術や本格的な抗がん剤治療など、入院加療が必要となる治療は当クリニックでは行っておりません。検査の結果、これらの治療が必要と判断された場合は、速やかに適切な高次医療機関へご紹介させていただきます。
ステージ0〜Ⅰ(内視鏡治療が中心)
がんが粘膜層または粘膜下層の浅い部分にとどまり、リンパ節転移の可能性が極めて低い早期がんが対象です。大腸カメラを用いて、お腹を切ることなく内視鏡的に病変を完全に切除する、身体への負担が少ない治療(ポリペクトミー、EMR、ESDなど)が行われます。
ステージⅠ〜Ⅲ(外科手術が中心)
がんが腸壁の深い層まで及んでいる場合や、周囲のリンパ節への転移がある場合の標準治療です。がんを含む腸管を外科的に切除すると同時に、周囲のリンパ節も一緒に切除(リンパ節郭清)します。手術には、傷口が小さく体への負担が少ない「腹腔鏡手術」や、より繊細な操作が可能な「ロボット支援下手術」などが選択されます。
直腸がんの位置によっては「人工肛門(ストーマ)」を造設することもあります。 また、手術後の病理検査でリンパ節転移が確認された場合(ステージⅢなど)は、再発予防を目的として約半年間の抗がん剤治療(術後補助化学療法)を組み合わせるのが一般的です。
ステージⅣ(がんの治療+症状をやわらげる治療)
がんが血管やリンパ管を通じて、大腸から離れた臓器(肝臓、肺、腹膜など)に転移している状態です。転移の状況に合わせて手術、抗がん剤治療、放射線治療などから最適な方法が提案されます。
また、がんに対する積極的な治療と並行して、出血や腸閉塞などのつらい症状をやわらげる治療(緩和ケア)や人工肛門の造設などが優先される場合もあります。
当クリニックの内視鏡検査について
消化器症状の原因を正確に特定するためには、胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査による詳細な診断が重要です。原因が明確になることで、適切な治療へとつなげることが可能になります。
当院では、苦痛や不安に配慮した内視鏡検査を行い、初めて検査を受ける方にも安心してご受診いただける環境づくりを心がけています。
当院の内視鏡専門医は、消化管の部位ごとに適切な内視鏡操作を行い、苦痛を最小限に抑える検査技術を熟知しています。これまで培ってきた豊富な経験と専門技術を活かし、安全性と快適性を両立した検査を行っていますので、安心してお任せください。
内視鏡検査について詳しく知りたい方へ
当院の内視鏡検査の特徴や検査の流れ、費用については、以下のページで詳しくご案内しています。