胃がん

胃がんとは

胃がんは、胃の壁の最も内側にある粘膜の細胞が、何らかの原因でがん細胞になることで発生する病気です。

国立がん研究センターの最新統計(2024年死亡数・2021年罹患数)によると、日本における胃がんの罹患数は男女総数で第3位、死亡数は男女総数で第4位(男性3位、女性4位)となっています。以前に比べて右肩上がりの増加傾向は落ち着き、近年は横ばいとなっていますが、今なお多くの日本人がかかる非常に身近ながんです。

一見すると怖い病気に思えますが、胃がんは早期発見さえできれば比較的治療成績が良いがんの代表格でもあります。初期の段階で見つけることができれば、胃カメラを用いた内視鏡治療だけで完治を目指すことも可能です。
本ページでは、胃がんの症状や原因、検査方法、進行度(ステージ)、治療についてわかりやすく解説します。

胃がんの症状

胃がんの症状には、がん自体によって起こる症状と、がんがあることで胃の粘膜が荒れて起こる胃炎などの症状があります。実際にはこれらを症状だけで区別することは困難です。

胃がんの初期症状

早期の胃がんには、ほとんど自覚症状がありません。がん細胞が粘膜の表面にとどまっている段階では、たとえサイズが大きくても、痛みや違和感はほぼ出ないのが特徴です。
もし早期の段階で胃の痛みや不快感がある場合は、胃がんそのものが痛んでいるのではなく、がんと同時に発生している胃潰瘍や慢性胃炎の症状が出ているケースがほとんどです。「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、無症状のうちに定期的な検査でチェックすることが、手遅れを防ぐ最大のポイントになります。

進行した場合の症状

がんが進行し、胃壁の深い層(固有筋層など)まで達すると、以下のような明確な自覚症状が現れ始めます。

  • 胃やみぞおちの痛み・重苦しさ
  • 食欲の低下、食べてもすぐお腹がいっぱいになる(早期満腹感)
  • 慢性的な胃もたれ、お腹の張り、胸やけ
  • 食事がのどや胸につかえる感じ
  • 吐き気や嘔吐を繰り返す
  • 吐血、または便が黒くなる(下血)
  • 原因不明の急激な体重減少

特に、胃の出口付近(幽門部)に進行胃がんができると、食べ物の通り道が狭くなってしまうため、強い食欲不振や嘔吐を引き起こしやすくなります。

胃がんは自覚症状が出にくいため、症状が現れた段階ではすでに進行している場合があります。ただし、自覚症状があるからといって必ずしも手遅れというわけではありません。適切な検査を受けることで治療可能な段階で発見されるケースも多くあります。「一時的に症状が治まるからストレスのせいだろう」と放置せず、気になる不調が続く場合は必ず消化器内科を受診しましょう。

胃がんの原因

胃がんの最大の危険因子はヘリコバクター・ピロリ菌感染です。日本で発生する胃がんの多くにピロリ菌感染が関与していることが知られています。ピロリ菌に感染すると胃の粘膜に慢性的な炎症(萎縮性胃炎)が続き、これが長い年月をかけてがん化の引き金となります。

胃がんになりやすい人の特徴

ピロリ菌感染に加えて、日々の生活習慣や環境もがんの発生リスクに影響を与えます。そのため、以下のような特徴に当てはまる方は特に注意が必要です。

  • ピロリ菌検査で陽性と言われたことがある
  • 慢性的な胃炎や胃潰瘍を繰り返している
  • 塩分の濃い食事(塩辛、漬物、ラーメンのスープなど)を好む
  • 喫煙習慣がある
  • 野菜や果物(βカロテンなど)の摂取が不足している

胃がんは生活習慣の改善も大切ですが、まずは根本的な原因であるピロリ菌を調べることが重要です。自覚症状が全くない方であっても、成人を迎えたら一度は胃カメラ検査を受け、ピロリ菌感染の有無を確認することをお勧めいたします。

胃がんの検査

胃がんのリスクや症状を調べる主な検査には「胃レントゲン検査(バリウム検査)」と「胃内視鏡検査(胃カメラ検査)」がありますが、当院では確実に胃カメラ検査をお勧めしております。

胃レントゲン検査(バリウム検査)

がんの全体像や、手術を前提とした胃全体の立体的な形・病変の位置把握には有用ですが、粘膜の微細な変化しかない初期の胃がんを見つけるための検査としては不向きです。

胃内視鏡検査(胃カメラ検査)

粘膜のわずかな色調変化しかない早期胃がんであっても、直接目で見て発見することが可能です。さらに、疑わしい部分があった場合はその場で組織を一部採取(生検)し、顕微鏡で調べる病理組織診断によって確定診断まで行えるのが最大の強みです。

※胃カメラ検査で胃がんが疑われた場合や診断が確定した場合は、提携医療機関や高次医療機関へご紹介いたします。紹介先では、CT検査などによる詳細な病期(ステージ)評価を行い、その結果に応じて治療方針が決定されます。

胃がんの進行度(ステージ)について

胃がんの進行度(ステージ)を決定するうえで、最も重要になるのががんの深さです。これを「壁深達度(へきしんたつど:T因子)」と呼びます。がんが胃の壁を深く進む(浸潤する)につれて、血管やリンパ管に入り込み、リンパ節転移や肺・肝臓などの遠く離れた臓器に転移(遠隔転移)を起こすリスクが高まります。
そのため、がんがどこまで深くもぐり込んでいるかによって、治療の選択肢や見通しが大きく変わってきます。

壁深達度(T因子)について

胃の壁は内側から外側に向かっていくつかの層が重なっており、がんがどの層まで深く進んでいるかによって以下のように分類されます。

  • T1a: 粘膜内にとどまる病変 (M:mucosa)
  • T1b: 粘膜下層までにとどまる病変(SM:submucosa)
  • T2: 粘膜下層を越え、固有筋層までにとどまる病変(MP:muscularis propria)
  • T3: 固有筋層を越え、漿膜下(しょうまくか)組織にとどまる病変(SS:subserosa)
  • T4a: 漿膜の表面を突き破って外側に露出している病変(SE:tumor penetration of serosa)
  • T4b: 直接、周りにある他の臓器(膵臓や大腸など)まで達している病変(SI:tumor invasion of adjacent structures)

早期胃がんとは

がんの浸潤が、胃壁の「粘膜」および「粘膜下層」までにとどまるものを指します(上記分類のT1a、T1b病変)。この段階(ステージⅠ)で発見できれば、適切な治療を行うことで高い確率で根治を目指すことが可能です。粘膜下層まで進むとわずかにリンパ節転移のリスクが出てきますが、大半は胃のすぐ近くのリンパ節にとどまるため、外科手術で一緒に切除すれば治る可能性が十分にあります。

進行胃がんとは

がんの浸潤が、粘膜下層よりも深い「固有筋層」以降の深い層まで及んでいるものを指します(上記分類のT2〜T4病変)。胃の壁の深くまで進むほど、がん細胞が豊富な血管やリンパ管を通って広範囲に転移しやすくなるため、早期がんに比べて根治へのハードルが上がります。

また、正常な粘膜の下を潜り抜けるように水平に広がっていく特殊な「スキルス胃がん」も進行胃がんに該当します。表面に傷や病変が出にくいため、初期段階では胃カメラでも見つけにくい「内視鏡医泣かせ」のがんであり、胃の痛みなどの明確な症状が出現してから見つかったときには、すでに進行がんになっているケースが多いとされています。

胃がんの治療

胃がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者様の年齢、全身状態などを総合的に考慮して決定されます。主な治療法には、内視鏡治療、外科手術、化学療法(抗がん剤治療)があり、進行度に応じて単独または組み合わせて行われます。

なお、胃がんの治療は専門施設で行われるため、当院で胃がんが疑われた場合や診断された場合には、適切な医療機関へ速やかにご紹介いたします。

内視鏡治療

胃カメラを用いて胃の内側からがんを切除する治療法です。お腹を切る必要がなく、胃をそのまま丸ごと温存できるため、体に優しく術後の食事への影響がほとんどないのが特徴です。

ただし、リンパ節転移の可能性がない早期の胃がん(粘膜内にとどまるもの)が対象となります。切除後の病理検査の結果によっては、追加で外科手術が必要になる場合もあります。(※入院加療が可能な施設で行う必要があるため、当クリニックでは行っておりません)

  • EMR(内視鏡的粘膜切除術): 特殊な電気メスの輪(スネア)で病変をきゅっと掴んで、電流を流して切り取る方法です。主に小さながんに対して行われます。
  • ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術): 電気メスのナイフを使い、がんの周りの粘膜を少しずつはぎ取っていく方法です。サイズに制限がないため、大きな病変も一括でキレイに切除できます。

外科手術

病変が粘膜下層より深くにもぐり込んでいるものの、他の臓器への転移がない場合の標準的な治療法です。がんを含む胃の一部、または全部を外科的に切除すると同時に、将来転移するリスクのある周囲のリンパ節も一緒に広範囲に切除します(リンパ節郭清)。必要に応じて、手術の前後に抗がん剤治療を組み合わせることもあります。(※入院加療が可能な施設で行う必要があるため、当クリニックでは行っておりません)

化学療法(抗がん剤治療)

抗がん剤などのお薬を用いて、がん細胞の増殖を抑えたり攻撃したりする治療法です。胃がんでは、進行度(ステージ)によって治療の目的が以下のように変わります。(※入院加療が可能な施設で行う必要があるため、当クリニックでは行っておりません)

  • ステージⅠ~Ⅲの場合: 外科手術による治療成績をさらによくするためのサポートとして、手術の前後に抗がん剤治療を行います。
  • ステージⅣの場合(他臓器への転移がある方): がんが胃以外の離れた臓器(肺や肝臓など)に広がっている場合、手術で全てを取り除くことが難しいため、がんの進行を遅らせて生活の質を保つことを目的に抗がん剤治療を行います。

当クリニックの内視鏡検査について

消化器症状の原因を正確に特定するためには、胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査による詳細な診断が重要です。原因が明確になることで、適切な治療へとつなげることが可能になります。

当院では、苦痛や不安に配慮した内視鏡検査を行い、初めて検査を受ける方にも安心してご受診いただける環境づくりを心がけています。

当院の内視鏡専門医は、消化管の部位ごとに適切な内視鏡操作を行い、苦痛を最小限に抑える検査技術を熟知しています。これまで培ってきた豊富な経験と専門技術を活かし、安全性と快適性を両立した検査を行っていますので、安心してお任せください。

内視鏡検査について詳しく知りたい方へ

当院の内視鏡検査の特徴や検査の流れ、費用については、以下のページで詳しくご案内しています。

今、胃がんでお悩みの方へ

症状がある場合は、絶対に放置せず必ず消化器内科を受診しましょう。
自己判断し、様子をみるのは大変危険です。
特に症状がひどい場合や急に体重が減少している場合は、早急に受診しましょう。

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